大腸摘出手術のこと(1)

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大腸は全部とらなきゃいけないの?

内視鏡検査で直腸に異型細胞が見つかり、全大腸摘出手術の可能性が濃厚となったために精密検査が必要になったという、今回の入院の経緯については以前に書きました。しかし、見つかった場所は直腸の一箇所だけに過ぎず、それも、前ガン状態とはいっても、ガンそのものではないのに、切除、しかも大腸全部を取り去ってしまう必要が本当にあるのでしょうか?

潰瘍性大腸炎(UC)に罹患した状態が、10年以上のような長期間になると高い確率で大腸ガンになるということはよく知られています。UCは基本的には完治しない病気なので、つまり、すべてのUC患者は、長く生きるほど高確率で大腸ガンになるということになります。UC患者の大腸がん罹患率は、通常の人に比較して4~7倍とも言われていますが、しかし、ネットでいろいろな統計情報などをざっと見た限りでは、このあたりのデータが明確に示されているものは見当たりませんでした。それに、ガンとUCの間にはっきりとした因果関係があると解っているわけではありません。ですが、いずれにしても、UCは大腸ガンになりやすいというのは確からしいので、長年のUC患者は、1~2年に1回は大腸内視鏡検査を受けるなどして、ガンの兆候がないかどうかを定期的にチェックする必要があります。で、今回、私にその、異型細胞=ガンの兆候が見つかったわけです。

異型細胞と一口に言っても、さほど問題視しなくてよいレベルから、限りなくガンに近い状態までと幅があります。ですから、その状態によっては切除せずに経過観察するという判断もあり得るのです。ところが、潰瘍性大腸炎がある場合には、この判断が非常に困難になります。UCの病変が、異型細胞の状態を分かりにくくしてしまうのです。また、見つかった異型細胞が一箇所であったとしても、他の場所に別の異型細胞や、その元になっているものが潜んでいる可能性があるのですが、これらもUCの潰瘍によって隠されてしまいます。そういうわけで、UCで異型細胞が見つかった場合は、よほど高い確実性をもって限局的かつ、危険性が低いと判断されない限りは、大腸切除を行います。そして切除を行うとなったときには、大腸の他の部位へ病変が拡がっている、あるいはそうなる可能性を前もって見越して、大腸全摘術を行う、というのが通常勧められる適切な対処の仕方とされているのです。それでは、全大腸摘出手術とはいったいどんなことをするのでしょうか。

やはり、本当に手術しなきゃいけないのか・・・

入院中、主治医の先生から具体的な手術の方法、つまり術式について説明がありました。大腸全部を小腸接合部と肛門の部分で切り離して取り去り、その後小腸と肛門を直接つなぐのですが、その時小腸の末端部分をアルファベットのJの形状に折り曲げて、そこを袋状(Jパウチ/Jポーチ)にしたうえで肛門と接合します。ただし、接合してすぐは、接合部分がまだしっかりくっついおらず、もの(排泄物や腸液)を通せないので、手術後数ヶ月の間は人工肛門を設置して、排泄はそこから行います。その後、再び手術を行って人工肛門をなくし、小腸とつないだ肛門から排泄するようにする、というのが手術の大まかな流れです。先生は紙に大腸や小腸の絵を描きながら説明してくれました。

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自覚症状はまったくないばかりか、むしろ最近は調子がいいと感じていたところに、突然手術と言われたので、「なぜ?」「ほんとうに?」という思いで、人に聞いたり、本を読んだり、ネットを検索したりとあれこれ調べて見ましたが、その結果、手術の可能性はやはり濃厚で、それも大腸全摘一択だということがだんだんはっきりしてきました。そして、主治医から具体的な術式の説明。どうやらこれはもう観念するしかないと思い至りました。