大腸摘出手術のこと(3)

A4_RGB_72ppi

潰瘍性大腸炎患者を苦しめるトイレの悩み

私が主治医から説明を受けた術式は、肛門とJパウチをつないだ後、縫合不全を防ぐために一旦人工肛門をつくるということでしたので、IAAであることが判りました。

ここでまっさきに気になるのは、やはり術後、排便機能がどうなるのかということです。潰瘍性大腸炎患者は、四六時中トイレの心配をしながら毎日を送らなければなりません。症状が顕在化しているときはもちろんのこと、寛解期であっても、いつ何どき突発的な便意に襲われるかもしれないと、頭のどこかで常に気にしています。このようなトイレの悩みは、日常活動の妨げにもなりますし、運悪く粗相があった時などは、自分は下(しも)のことさえままならないのか、という絶望感に苛まれ、精神的にひどく落ち込むものです。こういうことは、経験している人なら分かると思いますが、何度起きても、「またいつものことだからまあいいか」とはならない。慣れて気にならなくなるということは、いつまでたってもありません。病気の症状そのものが引き起こす痛み、倦怠感、あるいはステロイド剤を使用している時であれば、それによるさまざまな副作用など、そういったものもいうまでもなく患者を苦しめますが、とりわけトイレの悩みは、むしろそれら以上に辛く根深いものです。そして(医者も含めて)周囲の人になかなか理解されにくい。もし、「この病気に関してあなたが抱えている最もつらいことは何か」と問えば、おそらくほぼすべての潰瘍性大腸炎患者が、トイレの悩みだと答えると思います。

2つの術式に明確な違いはあるのか

手術後のトイレに関する生活がどうなるか、悪くなるのか、良くなるのか、またそれはどの程度なのかという問題は、最大の関心事なのですが、排便機能という点において、上記二つの術式のあいだには、大きな差があるようです。簡単に言うと、排便機能の温存、または機能回復の早さという点と、他方、UC再燃やガン化のリスク、これら二項のトレードオフになっています。ではこの二項について、両術式の間に、具体的にどの程度差があるのかというと、これが問題なのですが、判然としないのです。排便機能の温存という点についていえば、実際に手術を受けた人の話がネット上にも結構出てるのですが、IACAだからといって温存された、あるいは早く回復したと一概には言えず、評価はまったくまちまちです。上に引用した記事にも、術式よりも個人差のほうが大きいとあります。また、再燃とガン化リスクについて見てみても、IACAが明確にリスクが高いとも言えず、逆にIAAであっても再燃、また発ガンの事例があります。

こうなってくると、術式の違いよりも別の面に目を向けたほうがよさそうです。たとえば、Jパウチに炎症が起こる回腸嚢炎は、術式の違いを問わず、大腸全摘術に共通して起こり得る症状で、そのリスクは30~40%とされています。このことは、別の病院のある消化器外科の先生が提供してくださった情報なのですが、その先生によると、このように、術後にも付随する問題が起きうるので、後の病院通いのことも考慮に入れたほうがよいとのことでした。たしかに、人工肛門を設置することになれば、そのためのトレーニングやケアのこともあるでしょうから、どこの病院で手術をするのかということのほうを、より重視すべきかもしれません。今の病院の主治医からはIAAの説明を受けましたが、まだ今のところは、今回受けた検査の結果も出ておらず、手術実施も確定していないので、引き続き入念に調べてみようと思います。